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2019 2019.07.08 オートメーション・エニウェア 長橋氏「最後の決め手は自分の信念」


オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社 シニア・マネージャー カスタマーマーケティング 長橋 明子さん

〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー⑧〉
新卒でNTTコミュニケーションズ株式会社に入社した長橋さんは、13年ほどさまざまな職種を経験した後、創業間もないワークスモバイルジャパン株式会社にジョイン。そして今年7月よりオートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社に活躍の場を移しました。大企業とスタートアップの両方を経験した長橋さんに、大切にしている「キャリアの軸」について伺いました。
(聞き手:ビッグビート マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴)
 

新卒10年目に知ったマーケティングの魅力



——まず新卒で入社されたNTTコミュニケーションズ株式会社 (以下、NTT Com) では、どんなお仕事をされていたのですか?

長橋さん

エンジニア志望で入社したので、最初はネットワークのエンジニアをしていました。私は文学部出身なのですが、大学生のときにIT系ベンチャーでアルバイトをしていたこともあり、インターネットに関わる仕事がしたいと思っていたんです。

NTT Comでは3年ほどでジョブローテーションがあるので、3年後に社内異動でアプリケーションサービスの開発部署に行って、設計や企画を担当しました。そこからまた3年後に辞令が出て、次に配属されたのは、なんと経営企画部。大企業でなければ、こんなキャリアパスにはならないですよね(笑)。

——経営企画部とは、すごいですね。そのときの業務内容は?

長橋さん

新規事業の事業計画をチェックして、担当者と詰めていくとか、幹部会議の資料作りを手伝うとか。幹部から落ちてきた話を事業部に落として、一緒に形にしていくようなケースもたくさんありました。

——すごく鍛えられそうですね。

長橋さん

そうですね。ただ、ちょうどそのタイミングで産休・育休を取って、復帰してからは短時間勤務をしていたので、早朝から深夜まで顔を付き合わせて仕事をする人たちの中で働くのは、私にとって、とても大きなチャレンジでした。

組織のオーバーヘッド部門にいたので、次は「できるだけ現場に近い成長領域に行きたい」と希望を出しました。その結果、エンタープライズ向けのインフラをクラウドで提供する、クラウドサービス部に配属されて。そこで初めてマーケティングに出会いました。

——そこでは、どんなお仕事を?

長橋さん

グローバルマーケットに対するプロダクトマーケティングですね。世界中に広がる現地法人のセールスに、武器を与えるような役割でした。私が担っていた役割は大きく分けて2つありました。
1つ目は製品コンセプトをマーケティングメッセージにして展開したり、Go-To-Market戦略のベースを作ったりすること。各国でローカルの販売戦略があるので、その基盤となるグローバル共通のものを作っていました。

2つめはアナリストリレーションです。グローバルのエンタープライズの人たちにNTT Comを知ってもらうためには、GartnerやIDCなどの第三者レポートに名前を載せてもらって、良い評価をしてもらう活動が必要なんですね。そのためにアナリストに対してブリーフィングをしたり、サーベイの回答をしたりしていました。

そこにも3年くらいいたので、NTT Comにはトータルで13年は在籍していたことになります。

——なぜ大手企業のポジションを手放して、転職されようと思ったのですか?

長橋さん

NTT Comは技術力があるので、どうしてもプロダクトアウト(Product Out)の思想になりがちなんですね。それはそれでメリットはあるものの、ユーザーやマーケットから遠くなってしまっている感覚がありました。そこで次はもう少しお客様に近いところに行って、お客様と向き合いながら新しいマーケットを作っていきたい”と思うようになりました。お客様のお役に立てている実感が欲しかったんです。

 

ユーザーをアドボケイト(Advocate)するコミュニティづくり



——その後、ワークスモバイルジャパン株式会社(以下、ワークスモバイルジャパン)に転職されましたが、いかがでしたか?

長橋さん

よく「大企業からスタートアップに転職して、ギャップはなかった?」と聞かれるのですが、驚くほどまったくなかったです。初日から楽しくて仕方がなくて。まだ新しい会社だったので文化をこれから作っていける状態だったのと、初期メンバーに外資系企業の出身者が多かったので、価値観が似ていたからかもしれません。何よりも、自分がやりたいことを進めていくときに、「こんなにすぐにやらせてもらえるんだ!」という喜びがありました(笑)。

大企業では何かちょっとしたことを始めるにも、たくさんの人との調整や承認が必要だったところから、「これやっていいですか?」「いいよ」だけでやっていい環境に置かれて、「なんて幸せなんだろう!」と思いました。

——逆にプレッシャーはなかったですか?

長橋さん

それはありましたね。私が始めたことがベースになってしまいますし、もし失敗したら、会社の貴重なリソースを削ってしまうことになりますから。責任感の大きさは、全然違いました。

——ワークスモバイルジャパンに入られて、最初に着手されたことは何でしたか?

長橋さん

もともとカスタマーエクスペリエンスというのは事例を作ることと、ユーザーの声をフィードバックするのが大きな役割だったので、そこからスタートしました。ちなみにワークスモバイルジャパンでは、「マーケティング」と「プロダクトマーケティング」が分かれていて、私が入ったカスタマーエクスペリエンスはプロダクトマーケティングに属していました。

私自身、もともと新規獲得を狙うマーケティングをやるつもりで入ったわけではなかったんです。初期にやっていたことは、ユーザーの事例を作って、プロダクト・マーケット・フィットを目指し、マーケットを作っていくということでした。当時はビジネスチャットというカテゴリ自体が認知されていなかったので、自分たちのユーザーがLINE WORKSをどう使って、どんな効果を出して、どこに価値を感じてくれているのか、といったことがわからない状況だったんです。

当時はユーザーの数も今よりはるかに少なかったので、まずはユーザーの利用状況を見て、たくさん使ってくれているお客様を探してコンタクトを取り、事例化のお願いをして、インタビューさせてもらいました。そこで挙がったストーリーを事例としてWebサイトに載せたり、スライドにして販促資料として使ったり、といったことを行っていきました。

——なるほど。

長橋さん

だんだん事例が増えてきて、ユーザーの意見も集まってきたところで、次にやったのがユーザーの声をプロダクトにフィードバックする仕組みを作ることです。最初の頃も、お客様の声を開発にフィードバックすることはしていましたが、ユーザーの数が多くなってくると、すべてのお客様の声を聞けませんし、たまたま聞けた声が他のお客様の声を代表しているとも限らないので、お客様の声を可視化して反映する仕組み化が必要だろうと。そこで始めたのが、集まったユーザーの声を一箇所に集約して開発にフィードバックする“カスタマーエクスペリエンス・マネジメント”です。

整理すると、0→1で事例を作り、1→10でユーザーの声を拾う仕組みを作り、次の10→100で着手したのがコミュニティづくりです。

コミュニティは細々と始めてはいたのですが、その頃にはユーザーも増え、数万単位の導入社数になっていました。数万単位のユーザーに対して、いくらコミュニティのミートアップを開催して数十人に来てもらっても、砂漠に水を撒くようなものです。ごく一部の人たちだけに満足してもらっても効果が出ないので、来場してくれた人だけでなく、その人たちを中心に他のユーザーに広げてもらってスケールすることを目指すようになりました。



——そうした新しい取り組みを始める権限は、すべて長橋さんがお持ちだったのですか?

長橋さん

いえ、そんなことはありません。ただ、この会社のすごく良いところは、やりたいと手を挙げたことにお金がかからなければ、あまりダメとは言われないことです。カスタマーエクスペリエンスに関しては、私自身がそのロールで入ったし、「これ私がやります」と宣言して進めてきた感じですね。

特にロールの名前にはこだわっていて、もともと“カスタマーエクスペリエンス”だけだったのですが、そこに“アドボカシー(Advocacy)”を付け加えたんです。なぜかというと、LINE WORKSにはすごく熱心なユーザーさんがたくさんいて、一人一人の話を聞いて事例化するだけではもったいないと思ったからです。同じような熱量の方々を集めて、その方々同士で情報交換をしてもらえれば、もっと外に広がりますし、その方々にヒーローになってもらいたい。そんなことがやりたくて、“アドボカシー”を付けることにしました。

——反響はどうですか?

長橋さん

「アドボカシー、アドボケイトって、何?」と聞いてもらえるので、私たちの想いを伝える良い機会になっていますね。エバンジェリストは、知識や知恵を“授ける”という上からな感じがしますが、アドボケイトは“支持する”という意味なので、ユーザーさんを応援したい気持ちが表れているアドボケイトって、いいなと思っています。

 

根底にあるのは、自分の好きなサービスを広げたいという純粋な想い

——長橋さんはこの6月でワークスモバイルジャパンを離れて転職されるそうですが、次はどんなチャレンジをされるのですか?(長橋さんは7月1日より、オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社にて、シニア・マネージャー カスタマーマーケティングとして新たなキャリアをスタートされます。)


長橋さん
3年間ワークスモバイルジャパンで活動してきた中で、自分自身がさらにアドボカシーにフォーカスしたいという気持ちが芽生えてきました。そんなときに、まさに自分が考えていることにグローバルで取り組んでいる企業があったので、そこでチャレンジしてみようかなと。

カスタマーサクセスの目的は“既存ユーザーのチャーンを減らす”とか“クロスセル・アップセルにつなげる”ということがよく言われますが、それだけでなく、サクセスした既存のユーザーを起点にしたマーケティングを行うことで、新規のユーザーを獲得していこうという考え方をしているんです。

ワークスモバイルジャパンでは、自分の役割にとらわれず、様々なマーケティング活動をさせてもらいましたが、そこで感じたのは「企業からの広告宣伝は、どうしても届く範囲が限定的になってしまうな」ということでした。もちろん、うまくやる方法もあると思いますし、その活動がなくなるとは思いませんが、そういった従来の広告宣伝よりも、熱量のあるユーザーさんから市場に広げてもらったほうが、適切な人に正しく届く効果があると実感しているのです。

企業とユーザーさんの関係は、本来サービスを“提供する側”と“される側”ではなく、ユーザーさんが主役になるべきだと思っているので、彼らのストーリーや彼ら自身に光を当てることで、「うちも同じようにやってみようかな」と考える人を増やせるじゃないですか。企業が「デジタルトランスフォーメーションは重要ですよ!」というよりも、ユーザーさん自身が「ITの取り組みを始めたら売上が2倍になりました!」と言ってくれたほうが、よっぽど響くんですよね。その輪が広がって、日本のたくさんの企業を元気にできればいいなと思っています。



——確かにそうですね。BtoBでは、“身近な誰かの推薦するものを買う”という選び方はよくありますよね。

長橋さん

そうなんです。ファンマーケティングはBtoBでは効かないと思われがちですが、実際はまったく逆。BtoBこそ事例を求めますし、同業他社とのつながりがあって、「あそこがやっているならうちもやろう」となるんですよね。もちろん途中で何かしらの論理的な判断はあるとは思いますが、まず担当者が良いと思って稟議に上げてくれないと、土俵にも上ることができませんから。

——BtoBこそエモーショナルなところで決まるというのは、大いにあると思います。それはそうと、長橋さんのアンテナの高さがすごいなと思うのですが、今のままのほうが良いのではないかと、ブレーキをかけることはないのですか?

長橋さん

ありますよ。それなりに悩む期間は長いですし、今回もギリギリまで悩んでいましたから。でも最後にアクセルを踏む決め手となるのは、自分の信念です。私の場合、“プロダクトやサービスを自分自身が好きでいられるかどうか”がモチベーションの源泉になっているので、そこが一番大きいですね。

だってマーケティング職でこの先10年くらいは職にあぶれることってない気がしませんか?需要のほうが絶対に多いと思うんです。それに成長しているマーケットや企業を選べば、上がっていく道筋は見えていますから。そこの見極めは重要なので、投資家目線で見ています。

——マーケティングは部分最適化されがちだと思うのですが、経営に近い視座を持ってマーケティングに取り組むためには、どんなことを意識すれば良いとお考えですか?

長橋さん

実をいうと私、自分がマーケターだという認識があまりないんです。自分がこれだと思ったサービスを広げるための仕組みづくりが向いていると思ってやっているだけで。
スタートアップでは会社の成長に必要なことは何でもやることができるので、細分化されているのが嫌であれば、ぜひスタートアップに行ってほしいですね。逆に、ある程度の規模になると1人にナレッジを溜めてPDCAを回したほうが効率的なので、規模が大きくなればなるほど細分化せざるを得ないんですね。だから細分化に慣れていた人が同じようにやるつもりでスタートアップに入ってしまうと、辛くなってしまうとは思います。

——最後に、今年のBigbeat LIVEにご来場いただく方に向けてメッセージをお願いします。

長橋さん

こういう場があることは、すごく素晴らしいことだと思いますし、Bigbeat LIVEの良いところは、イベント自体がコミュニティになっているところですよね。話す人と聞く人の境目が良い意味で曖昧で、話す人も聞く人も、立場を入れ替えながら、全体でムーブメントを作り上げている印象があります。
私自身もその盛り上がりに参加できるよう、いろいろな立場で参加したいと思っていますので、みなさんぜひ会場でお会いしましょう。

——本日はありがとうございました。




[撮影]野村昌弘
[執筆]野本纏花
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