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2019 2019.06.26 アジャイルメディア徳力氏「ビジネスマンこそ情報発信が重要な理由」


アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 アンバサダー/ブロガー 徳力 基彦さん

〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー④〉

2019年8月2日に開催する「Bigbeat LIVE 2019」に登壇するアジャイルメディア・ネットワーク株式会社(以下「アジャイルメディア」) アンバサダー/ブロガーの徳力基彦さん。新卒で大企業に入社するも、ご本人によると「若気の至りで転職」し、その後「迷走して苦しむ日々が続く」なか、「ブログに人生を救われた」というユニークな経歴の持ち主です。

現在はブロガー、そしてマーケターとしてご活躍の徳力さんに、ビジネスパーソンが情報発信することの有用性や、日本企業のマーケティングに何が足りないのか、ビッグビート代表取締役 濱口豊がインタビューしました。


 

「ブログに人生を救われた」という徳力さんのビジネスキャリア

濱口
今回はBigbeat LIVEへのご登壇ありがとうございます。Bigbeat LIVEに来場いただく方々のほとんどは、徳力さんのお名前をご存じだと思いますが、この記事ではまず徳力さんご自身のキャリア、そしてブログとの関わりについて伺わせてください。

徳力さん
ブログについてはですね、実は私、「ブログに人生を救われた」人間なんですよ。


濱口
というと?

徳力さん
新卒で入社した会社はNTTだったのですが、働くうちに壁にぶつかったんですね。で、若気の至りで、そのまま退社してしまいまして……。
当時、社会人大学院でマーケティング講座を受け、レポートで優秀賞をいただいたので、「自分はマーケティングができる」と大きな勘違いをしちゃっていました。でもマーケティングなんてNTT時代はやったこともなかったので、マーケティング職で採用してくれる会社はありませんでした。そこでキャリアリセットのためにITコンサルティング会社に移ったのですが、肌に合わず1年で辞め、次に転職したのが、アリエル・ネットワーク(以下「アリエル」)です。ここにマーケティング担当として転職し、本当にやることなすこと全部がうまくいかないという経験をしたんです。

濱口
それはなぜですか?

徳力さん
一言でいえば、実務がわかっていなかったんです。たとえば、IT企業同士で業務提携を発表するケースがありますが、ああいうものは「お互いの技術力が高く、補完し合える関係であれば、社長同士で手を取り合って進むはずだ」と思っていたんです。
幸いアリエルには優秀なエンジニアがそろっていたので、自分は前に出ず、エンジニアたちを“立たせ”て、会社をアピールすることにしました。でも、なかなかうまくいかなかったんですよ。

ちなみにその間、ぼくが何をやっていたかといえば、ずっと会社にこもって仕事をしていたんです。というのも、「真面目に仕事をしていれば、会社はそれを見て評価してくれるはずだ」と考えていたからなんですよね。外に出てネットワークを広げるなんて、思いもよらなかった。完全にNTT時代の大企業型のやり方だったんです。


濱口
変わるようになったきっかけは?

徳力さん
結局、マーケティングは経験者の方が採用されて、ぼくはプロダクトマネジメントの部署に異動になったんです。で、その時に有り余ったエネルギーや思いの丈を、ブログにぶつけるようになりました。そうしたら、なんとなく仕事に対する考え方とかが変わってネットワークも拡がり、仕事がうまく回るようになったんです。

濱口
だから「ブログで人生が変わった」んですね。

徳力さん
あとはSNSですね。ちょうどmixiやGREEなども登場したころで、ぼくも知人からGREEに招待されて入ったんですよ。そうしたら、ネットベンチャー系の人たちがつながっていて友だち同士だということがわかったんですね。
ビジネスのきっかけは、「論理的に正しい」だけで進むわけではない。むしろ、よく知っている人だったり、学生時代からの友人だったり、飲み会でよく会ったりなど、そういうところから進んでいくことに、そこでようやく気が付いたんです。

そこから180度仕事のやり方を変え、外のネットワークやイベントに参加するようにしました。で、ブログにそれらのことを書いて情報発信するようにしたんです。ブログをはじめたころは匿名でしたが、「個人名を出してつながった方がいい」と考え、実名でやるようにしたんです。

濱口
そしてブロガーとして活躍するようになり、アジャイルメディア・ネットワークに参画して……、

徳力さん
社長になって、5年前に社長を降りて取締役CMOになり、今回取締役を降りてまたブロガーに戻るという、非常に変わった経歴なんです(笑)。


 

「アンチステマ」で始まったアジャイルメディア


濱口
アジャイルメディアでは、ブロガーを軸にしたユニークなマーケティングサービスを展開されましたよね。

徳力さん
アジャイルメディアが設立される前の年の2006年当時、極端な言い方をすると、ブログに危機が訪れていました。いわゆるペイパーポストと呼ばれる「ブロガーに100 円払って記事を書かせる」という手法が流行ったんです。
その結果、ブログ=やらせ、ステマみたいなイメージになりかねない印象がありまして。だからアジャイルメディアは、言葉を選ばずにいうと、「アンチステマ」のプロジェクトとして始まったんです。

ぼく自身、ブログをコミュニケーションとして楽しんでいましたし、人生が救われたので、ブログ=ステマみたいになってしまうのは悲しかったですから、ちゃんとそういうことを表現できる場を作りたかった。
ベンチャーとして、投資家にリターンを返す責任も負っている会社ですが——変な言い方ですけど——業界におけるホワイトナイト的存在というか、「ダークサイドに陥らなくてもビジネスはできる」ことを証明する、そんな十字架も背負っていたんです。

ブロガーの視点からすると、興味のない会社や商品の記事は、正直楽しく書けません。ブロガーが記事を書くかどうかは、あくまで自分が「面白い」「紹介したい」と思うということが大事だと思っていて、興味がないのに、小銭をもらったからとヨイショ記事やヤラセ記事を書くのは魂を売り渡すようなものだと思うんですよね。

だから当時は、ブロガーを集めたイベントを開催する際にも、交通費など含めて謝礼金などは出さないポリシーで運営していました。普通の記者会見と同じで、興味がある人なら自腹で交通費出してきてくれると思うので。
ただ、その分当然、書く記事の内容には口を出さないし、書くか書かないかも自由です。

でも当初、こうした考えはクライアント企業や広告代理店の方々になかなか理解されず、営業は相当苦労したと思います。ぼくらはあくまで「興味のある人を呼んで、その人たちに魂のこもった記事を作ってもらうべき」というスタンスでしたが、クライアント企業からすると「30人ブロガーを呼ぶのにお金を払ったのだから、当然30本記事が書かれるはずだ」となりがちなんですよ。だから当初は営業は相当板挟みで大変だったはずです。

濱口
今はいかがですか。

徳力さん
SNSブームも手伝って、企業側もこうしたユーザーのクチコミを「広告」ではなく、パブリックリレーションやコミュニケーションの延長として考えてくれる人が増えたと感じています。つまり、広告で無理矢理振り返ってもらおうとするのではなく、コミュニケーションを通じてよりファンになってもらうという考え方です。

その過程で我々が注力するようになったのが『アンバサダープログラム』です。この時代、企業のユーザーひとりひとりがメディア化しているので、「既存のお客さん=ファン」を大事にすることで、彼らがブランドのアンバサダー的な活動をしてくれる可能性がひろがっています。
広告費を出してペイドメディアで新規顧客をつかまえようとするだけではなく、既存顧客を大事にすることで、メディア化した既存顧客の声を通して新規のお客さんが増えていく可能性を広げるというものです。いまはBtoCが中心ですが、海外だとBtoBでうちのようなビジネスを展開する企業が伸びているそうで、日本でもそうなることを期待しています。

 

マーケティング的な発想を身に付けるために必要なこと

濱口
さて、皆さまに共通してお伺いしているのですが、「マーケターの仕事」について、中学生に説明するとしたら、徳力さんはどのように説明しますか。

徳力さん
難しいですね。ぼくはやっぱり、「マーケターは市場創造=市場を創る仕事」と説明すると思います。
市場を創るということは、たとえば「新しい商品が出きたときに、それを買ってくれる人を創出する仕事」ということ。マーケティングとは市場を創ることなんだよ、とちゃんと翻訳すれば、日本はこんなにマーケティング後進国にならなかったと思っているので。
 



濱口
そのためには、どういうスキルが必要だと思いますか。

徳力さん
ネスレ日本株式会社の高岡浩三社長がおっしゃっていることですが、日本は、マーケティングを重要なスキルとして認識しないまま、「営業」と「開発」の2つで伸びてきてしまったんですよね。営業も開発も、本来マーケティングにおいて重要な要素ではあるんですけど、このどちらかしか経験していない人が経営者になると、どうしても俯瞰的なマーケティングの視点が不足しがちです。
もともとの創業者は、「この事業を大きくするためにどうすればいいか」と顧客や市場の視点で考えて事業を立ち上げているので、たぶん本能的にマーケティング的なことをしているんですけど、会社が大きくなると、みんなそれぞれの業務に縦割りに閉じこもってしまいがちなんです。

マーケティングがうまくいっている企業は逆に、1人の社員に権限をあたえて起業家レベルのことを経験させている印象があります。意外とそれがうまくいく。たとえば伊藤園が米国に進出した時に、角野賢一さんという方にサンフランシスコ地域を一人で担当させてるんですけど、角野さんは自分で試行錯誤してシリコンバレーに『お〜いお茶』の市場を開拓するんですよ。ああいう形が、本来の意味で「市場を創る」ということなんだろうなと。企業の中にそういう人が増えると、会社は変わると思います。

濱口
「マーケター」という職種ではなく、「マーケティング的なことができる人」を増やすというわけですね。

徳力さん
そんな感じですね。日本ではCMO待望論がありますが、単なる役職を増やすのではなく、マーケティング的な視点で物事を考えられる人を増やす方が、向いていると思います。一人のトップダウンだけでなく、ボトムアップの動きが大事かなと。

濱口
そういう全体的な視点は、どうすれば身に付けられますか。

徳力さん
会社とは違う自分の軸を持つだけで随分変わると思います。会社に仕事をもらっていて、それに自分の人生のすべてを突っ込んでしまっていると、「自分の会社」というコミュニティしか知らないために、視野が狭くなりがちだと思います。
だから、1つでいいから、その会社に所属する自分と違う軸を持つと、複数の視点で見る癖をつけることができるようになると思います。ぼくの場合、それがブログだったわけです。

 

変化を恐れず、自分から情報を発信しよう

濱口
いま変化の話が出ましたが、最近の大学生は安定志向が高いそうで、2020年の新卒予定者の39.6%が「安定している会社」を重視しているようですよ。

徳力さん
私自身もNTTだったので、安定志向があったと思いますが……、そういう人たちばかりが組織に入ってくると、どうしてもその組織は弱くなりますよね。

濱口
安定しているというか、長く続いている会社は、安定を維持するために、ものすごい勢いで成長していると思うんですよ。

徳力さん
P&Gの元マーケターであるジム・ステンゲル氏も「失敗を恐れる病が組織を壊す」と話していましたが、同感です。いまみたいな変化の激しい時代に、安定志向の社員が増えると、結局変化ができないから、どんどん衰退していくことになるんですよね。
 


濱口
これから徳力さん自身、どのような未来、変化をしていきたいですか。

徳力さん
いまの主業務は、「アンバサダープログラムを企業に啓発する」ことで、大部分の時間は引き続きこの活動に費やすつもりです。企業のファンの方から「こういうコミュニケーションを企業と取っていきたい」というアイディアを出してもらって、共創の思想で一緒に企業のファンを増やしていくことには可能性を感じています。

同時に、個人的には、15年くらい前の自分みたいな人間に対して、「もっと違うやり方もあるよ」ということを伝える活動にも力をいれたいと考えています。ソーシャルメディアの普及で、せっかくいろいろな新しいコミュニケーションが取れるようになっているにも関わらず、あまりにも「自分に関係ない」と思っているビジネスパーソンが多すぎます。すごくもったいないじゃないですか。
メールや電話のようなプッシュ型ではなく、ブログやSNSというプル型コミュニケーションができたことで、誰かが自分の存在を見つけてくれ、自分が発信した言葉に対して「この言葉に励まされた」「こういう考えもあるんだと嬉しかった」といった声が聞けるようになる。これって凄いことなんですよね。

15年前のぼく自身、それを知ったことで今があるんです。自分が普通のビジネスパーソンでも、ブログやSNSで情報発信を続けることで、自分の悩みの答えを教えてくれる人が自分を見つけてくれるかもしれない。自分の記事を読んで、誰かが何かのきっかけを得られるかもしれない。それによって救われるような人は、ビジネスパーソンのなかにも、まだまだたくさんいると思います。そういうことを伝えていきたいですね。

濱口
最後、BigbeatLIVEにご参加いただく方にメッセージをお願いします。

徳力さん
まず、ひとりでも多くの方に「自分は単なる『聴衆』ではない」ということを感じてもらいたいですね。講演というと、どうしても「偉い先生」が前にいて、自分たちは「大勢の聴衆のひとり」と考えがちですが、いまの時代、みんなが発信者です。
壇上のスピーカーも、参加者の皆さんも、ある意味全員がフラットなんですよね。
そういう感覚をひとりでも多くの人に感じていただきたいと考えています。

濱口
実は“LIVE”という名前をつけたのも、それが狙いんですよ(笑)。徳力さんのセッションは最後なので、終わった後もぜひ残って、会場のみなさんと歓談していただければ嬉しいです。今日はありがとうございました。


 

[撮影]野村昌弘
[執筆]岩崎史絵

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