ニシタイ 西葛西駅前タイムズ

SNS
  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter

2019 2019.06.28 IKEUCHI ORGANIC 牟田口氏 「数字を見るな、お客様と向き合え」


IKEUCHI ORGANIC株式会社 営業部 部長/タオルソムリエ 牟田口武志さん


〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー⑤〉
風力発電のグリーンエネルギー100%で作られたタオル、赤ちゃんが口に入れても大丈夫な世界最高水準の安全テストをクリアしたベビー用品など、その品質とデザイン、そして機能性に優れた製品を提供し続けている、今治タオルの製造会社、IKEUCHI ORGANIC 株式会社。
その営業部長を務め、自社のオウンドメディア「イケウチな人たち。」の運営やファンコミュニティの主催、広報までマルチに活躍しているのが、牟田口武志(むたぐち たけし)さんです。

もともとはAmazonやCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)でデータと格闘しながら施策を進めるマーケターだった牟田口さんは「100%データを取らなくても、お客様と向き合うことがマーケターの使命」といいます。そんな牟田口さんが考えるマーケティングのあり方についてお話を伺いました。
(聞き手:ビッグビート マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴)

 

ベースにあるのは「お客様に喜んでもらいたい」という軸

 

—    最初は映画制作会社に入社し、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、Amazon(アマゾンジャパン)、そして現在のIKEUCHI ORGANICとなられたわけですが、これまでのご経歴のなかで、どのような部分を軸に据えてきたのでしょうか。

牟田口さん
学生時代に映画館でアルバイトをしていたこともあり、「映画をはじめとした、エンターテインメントに携わる仕事がしたい」と思っていました。

根本にあるのは、「世の中にいろんなコンテンツを届ける仕事がしたい」という軸であって、その仕事を通じて「お客様に喜んでもらいたい」という想いがありました。たとえば映画って、誰と観に行ったとか、どう感じたとか、そこから新しい出会いがあったとか、いろいろな喜びがありますよね。そういうことに携わりたかったんです。

 

「数字を見るな、お客さんと向き合え」といわれたCCC時代

 

—    映画制作からCCCでマーケティング担当になった経緯を教えてください。


牟田口さん
コンテンツを届けるという視点で言えば、CCCやAmazonは間違いなくその分野でトップクラスの企業です。そして大学時代からマーケティングに興味があったので、「どうせなら、トップ企業で修行したい」と考えたんです。
最初はTSUTAYA店舗のバイヤーからスタートして、自ら希望してTSUTAYA onlineに異動し、その後マーケティングを担当することになりました。

—    具体的に、どのような業務を?

牟田口さん
「いかに多くの方に商品を売るか、そしてどういう商品が求められているのか」を分析し、施策を打つという、一般的なECサイトのマーケティングです。
最初は当然ながらオンラインのデータを使って分析していたのですが、CCCという会社はリアル店舗に強く、影響力もあったので、最後の方はオフラインのデータを組み合わせながら、店頭を絡めた施策を企画しました。

—    今でいうオムニチャネルですね。

牟田口さん
そうです。人は、買う物やタイミングによってオンラインとオフラインを使いわけますよね。だから両方のデータを見るのは、当たり前といえば当たり前かもしれませんね。



—    一方、Amazonだとオンラインだけですよね。

牟田口さん
そうなんです(笑)。Amazonでは、Webディレクターやプロデューサー的な役割に当たる「サイトマーチャンダイザー」という職種でした。出版社の書籍マーケティングを企画したり、ページの構成をどうするべきか、データを見て判断する仕事です。

ただ、TSUTAYAでも、Amazonでも、「お客様の行動がどう変わるか仮説を立てて検証してアクションにつなげていく」という仕事であることに変わりはありません。CCCの時に、データベースからデータを抽出して分析していたので、膨大なデータがあるAmazonでも、そのスキルを発揮することができました。

TSUTAYA onlineの仕事をしていた時、上司にいわれて印象的だった言葉があるんです。それは「お前はデータだけ見ていて、お客さんの顔を見ていないだろう。データはただの数字ではなく、感情の動きなんだから、お客さんと向き合うつもりで見ろ」ということでした。
だから、どちらの企業であっても、データを単なる数字として捉えず、人の感情を汲み取りながらデータを見るようにしていたんです。その大原則は、どこでも変わらないと思います。

 

IKEUCHI ORGANICというブランド確立ができた理由



—    現在のIKEUCHI ORGANICに転職した理由を教えてください。


牟田口さん
日本のモノづくりに昔から憧れていたところもあり、自分自身が自信を持って人に勧めることができるプロダクトを持つ会社で仕事をしたいという気持ちが強くなってきたからです。

Amazonの仕事はエキサイティングではありましたが、数字が大きすぎて、お客様の顔が見えづらいという側面がありました。3年くらい経ったときに、「自分は何のために、誰を幸せにしたいのか」と考えるようになったんです。

そんな時、eumo(元鎌倉投信)の新井さんという方から、IKEUCHI ORGANICを紹介されて、感銘を受けたんです。日本の会社で、ここまで自然環境や人に配慮したプロダクトを作っている会社があったのかと。
それと同時に、一部のコアなユーザーにしか知られていない状況で、もったいないとも思いました。自分のこれからを考えるに当たって「この会社なら、自分のこれまでのキャリアを生かして社会に貢献できるかな」と思い、4年前に転職をしました。



—    IKEUCHI ORGANICは2003年に民事再生法を申請して、それまでのOEM生産から脱却し、自社ブランドをしっかり確立させる経営にシフトしましたよね。一方で、今治タオル全体で見ると、「今治タオル」というブランド自体の強化に向け、2006年に佐藤可士和さんをクリエイティブディレクターに迎えてブランディングを行なっています。

産地全体のブランディングを進めるなかで、IKEUCHI ORGANICは、「個」としてのブランディングを確立していったわけですが、それが成功した理由は何だと思いますか。


牟田口さん
佐藤可士和さんがブランディングに携わったおかげで、「今治タオル」の知名度は相当高くなりました。一方で、弊社も含め約100社が今治タオル工業組合に加盟して1社1社異なるモノづくりをしていますが、今治タオルというブランドは1社が作っていると思う方も多くいるのが現状です。代表の池内は当時から「個」を意識してSNSやブログで情報発信していました。

弊社の場合は、OEMの時からコアなファンが少なからずいました。代表の池内含めて社員全員が商品を誇りに思っています。ブランディングする上で、やはりプロダクトに力があることは大前提だと思います。
池内は新卒で松下電器に入社して、Technicsというレコードプレーヤーのプランナーをしていましたが、ディテールにまで気を配り、長くお客様から愛されるモノづくりをしていました。良いモノを作れば、自然とお客様が広げてくれるという発想が当時からあったんじゃないかと思います。

それから弊社は2014年に、池内タオルからIKEUCHI ORGANICに社名変更するタイミングで、ブランディングをナガオカケンメイさんにお願いしてから、一気に世界観が確立されました。社名にオーガニックとつけたのもコットンは全てオーガニックにするという意思の表れです。
パッケージやプロモーションよりも、ブランドとしてどうあるべきかを明確にしたことで、「個」が確立されていったと感じています。

 

データを100%取らなくても、お客様の気持ちを直接見る



—    お話を伺っていると、牟田口さんの仕事観やIKEUCHI ORGANICでは、やはり「お客様と向き合う」ということがポイントですね。


牟田口さん
そうですね。規模が大きい会社だと、どうしても業務は分断されてしまい、直接お客様の顔や声を聞く機会が持てないケースもあると思います。幸い、私の場合は店頭と事務所が同じ場所にあるので、店頭が忙しいときは接客する事がありますし、イベントでもお話する機会があります。直接お客様の声を聞くことができる環境があるのは本当にありがたいです。

—    意外と、職務がきっちり分かれていなくて、1人がいろんな仕事をする企業の方がうまく回るかもしれませんね。中小企業やスタートアップはそういうところが多いと思います。

牟田口さん
それはあるでしょうね。少なくとも、お客様との向き合いを自分ごととして捉えるかどうかで変わってくると思いますし、「お客様が実際にどう感じているか」については、どんな職種であっても、自分で情報を取りにいくという考えなので、一番問題意識を持っている人が仕事をした方が成果につながりやすいと考えています。

—    ちなみにいま、IKEUCHI ORGANICではどのようなデータを収集・分析しているのですか。

牟田口さん
ECではGoogle Analyticを活用していて、店頭はPOSデータで、ある程度は把握できます。当然ながらAmazonのときのように、あらゆるデータをあらゆる角度でとれる環境はありません。

ファクトをベースに、アクションを起こすには数字から検証することが重要ですが、定性的にお客様の感情を知ることは同じくらい大事です。店頭の接客では、お客様との会話の中で、どのようにIKEUCHI ORGANICを知ったのかなども聞くするようにしています。

個人的にはデータをたくさん取ることが正解とは思っていないんです。私も何度も失敗していますが、数字を取ることが目的になるのは本末転倒ですから。100%のデータを取れなくても、お客様の声を聞けば、何が真実かは自ずと明らかになります。

 

ブランドの思いをお客様と共有し、価値を共創するマーケティングへ



—    IKEUCHI ORGANICは強いファンベースを築いていらっしゃいますが、そこに向けての情報発信で心がけていることを教えてください。


牟田口さん
おかげさまで多くのファンの方に応援いただいていますが、常に熱量が高いわけではなく、タイミングによって熱量が変わったりすることも多いので、そこを深追いしてターゲティングするようなことはしていません。買ってもらう事をゴールとして、常にプッシュして販促し続けるのは、お互いに疲弊してしまいますし、ヘルシーな関係ではありません。

このタオルがおすすめです、という情報だけではなく、どのように洗濯すれば長持ちするのか、素材は何でできていのか。どんな人が製造しているのか。私たちは製品に関する事は包み隠さず、すべてお伝えしています。お客様が知りたいと思ったら、すぐにアクセスできるように整理しておく事が重要と考えています。

—    牟田口さんはマーケティング業務をどう捉えていらっしゃいますか?

牟田口さん
私自身は佐藤尚之さんの提唱された「ファンベース」はこれからの時代に求められている要素だと思っていて、「ファンを大事にして、中長期的な関係を継続的に築いていくこと」は現代のマーケティングにおいて必須だと捉えています。お客様を大事にする、ということはBtoBでもBtoCでも大事で、そこは変わりませんよね。お客様に買ってもらって終わりではなく、買ってもらってからがスタートだと思っています。

具体的に申し上げると、これからIKEUCHI ORGANICでやろうと考えているのが、タオルメンテナンス制度です。タオルは洗濯の仕方や干し方で耐久性がすごく変わってくるんですよ。5年10年と、長く使えるように、まずは私達の方で正しいメンテナンスをさせていただき、最終的にはお客様ご自身で、モノを大切に扱ってもらえれば、企業とお客様との関係が長く続きます。1枚でも多く売るのではなく、1年でも長く使ってもらいたいですし、IKEUCHI ORGANICというブランドを日常の生活で感じて欲しいと考えております。

それから、1つの製品を長く使うということは、資源を大切にすることにもつながります。IKEUCHI ORGANICでは、社名のとおりオーガニックコットンを使ってタオルを作っていますが、バスタオル1枚作るためには70平米の畑からコットンを収穫する必要があるんです。自然からいただいたもので製品を作っているわけですから、長く使って、その自然資源を次世代に残していくことも、弊社の使命だと考えています。お客様とこうした想いを共有し、次世代に向けて価値創造していくことも、マーケティングの一環と捉えています。



—    ありがとうございます。最後に、Bigbeat LIVEに参加される方へ向けてメッセージをお願いします。

牟田口さん
イベントや講演を聞いて、「いい話を聞けてよかった」と思う方はたくさんいらっしゃると思いますが、それで終わるのはもったいないな、と思います。著名マーケターの方もおっしゃっていますが、話を聞いた後、アクションにつなげる方が大事。全部の内容を覚えたりメモをとったりするのではなく、何らかの行動をしていただければ嬉しいですね。行動する仲間が一人でも増え、またIKEUCHI ORGANICのファンになっていただければ、こんなに喜ばしいことはありません(笑)。

—    ありがとうございます。
私もIKEUCHI ORGANICのタオルを使っていますが、確かに一度使ったら手放せません! では当日を楽しみにしております。



 

[撮影]野村昌弘
[執筆]岩崎史絵
Recommend
Ranking
  1. Bigbeat LIVE 第2章 プロローグ
  2. Bigbeat LIVE オリジナルビールができるまで ~Making Story~
  3. 【LIVEレポート③】 共感を生むための「継続力」と「巻き込む力」
  4. 【LIVEレポート④】 「共感 ∋ 共振」共感が交わる部分に鍵がある
  5. カスタマーサクセス×マーケティング ― デジタル時代の三方よし!
Mail magazine