ニシタイ 西葛西駅前タイムズ

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インタビュー 2019.04.25 "マーケティングトレース"とは-
マーケターに必要な視点(後編)





前編に引き続き、マーケターの筋トレコミュニティ「マーケティングトレース」を運営されている黒澤友貴さんと、
弊社・ビッグビートでマーケティング部を立ち上げ、自社とクライアント双方のマーケティングを行っている野北との対談をお届けします。

今回は、「経営者と同じ視点をもつにはどうすればよいのか?」という話に始まり、マーケティングの評価や予算など、
多くのマーケターが抱える悩みについても赤裸々に語り合いました。

参考サイト:マーケティング思考力を鍛えるトレーニングとは 
 

経営視点を持つために「長い時間軸で見る」



左:株式会社ビッグビート 野北 瑞貴 右:マーケティングトレース主宰 黒澤 友貴さん

野北
マーケターは経営視点をもつことが経営者とのギャップを埋めるカギだと思いますが、黒澤さんはそのあたりをどのようにお考えですか。

黒澤
経営者と同じ視点を持つというのは難しいことではありますが、ポイントは時間軸を長く延ばすことだと思います。

経営者が見据えているのは、3~5年後。しかし現場で仕事をしている方々は、1年間というスパンの中でどう成果を出すかということに囚われがちです。
その時間軸を1年よりもう少し延ばして、例えば「3年後はどうなるか」といった視点がもてると、もっと変わってくるんじゃないでしょうか。

発想の筋トレであるマーケティングトレースは、実務ではなく「妄想」。ある意味、妄想し放題なんです(笑)
3年後、5年後を自由に発想するというものなので、この筋トレを積んでおくことで、無意識に先を見据える発想が身につくと思っています。

仕事の中で目先のことに集中してしまうのは、ごく自然なこと。
ですから、実務とは別のところで先を見る力を鍛えて、変化を創出できるといいなと思いますね。

野北
営業担当はその月に売上がどれだけ上げられるのか、という目先のことを考える一方で、半年後、1年後の売上を見越して今からこれをやっておこう、という長い時間軸の視点も持たなければなりません。
一方で、売上という視点だけではなく、3年後に「この市場はどうなっているのか?」「この製品はどうなっているのか?」「競合が出てきた時はどうなるのか?」という視点も重要ですよね。

マーケターだけでなく、営業など様々な部署の人間が経営者のように広い視野で全体を見ることができるようになれば、
もっと企業の生産性が上がり、価値提供も変わったと言われるようになると思います。
早くそのステージに行きたいですね。



私は、時間(毎日の営み)が横軸で、会社の理念や目指すべき姿が縦軸なんじゃないかと思います。縦軸を追うにあたり、
どうやって横軸で達成していくのかが肝になってくるんじゃないでしょうか。そこを個人単位で考えられるようになるといいですよね。

黒澤
今は、個人の意志で市場を動かしやすい時代になってきていると思います。SNSが普及し、市場の広がり方や働き方が大きく変わりました。

そういう時代だからこそ、マーケティングトレースをやってマーケティング感覚を身につけた人たちが「こういう市場を動かしたい」「こういう価値を提供したい」という思いをもって、「こうやれば自分の思い描いた方向に市場を動かせるんだ」という成功体験を積むことができれば、その人の中に「会社でもっとこうしたい」が生まれますよね。

そういう循環が芽生えると、よりよい仕事につながるんだと思います。
まさに野北さんがおっしゃる、縦軸と横軸ですね。

野北
弊社代表の濱口がよく話すことなんですが、布って縦横きれいに織りなされていないと強くならないんですよね。どちらかが斜めだと、ほどけやすくなる。

自分の軸と会社の軸がずれてしまっているとかなり苦痛だと思います。それでも働かなければならない状況なのであれば、是正する必要がありますよね。

縦軸(理念)がきれいに会社と寄り添っていて、横軸(時間)は自分で決める、という形にすることができれば、働き方も変わってくるのではないでしょうか。
「残業なしで働いてください」というような、時間に拘束される考え方ではなくなるんじゃないかと思うんです。

これは採用にも深く関わってくる話です。
会社が理念や存在価値をしっかりと伝えることが出来れば、そこに賛同して一緒に働きたいと思う人たちが集まって来ると思います。

 

「自分がCMOだったら」という視点が発想力を生む


野北
マーケティングトレースの醍醐味はフレームワークを使いこなすことではなく、企業を分析して加工し、
数年先を見据えながら「自分がCMOならどんな経営計画を立てるか」と自分なりの視点で考えるところですよね。

黒澤
市場を動かすための仮説を立てる、というトレーニングを積んでおかないと、
いざマーケティングの仕事で「何かアクションを作ってください」と言われても小さな発想しか出てきません。

私は「自分より2段階上の役職視点で仕事しろ」と言われて育ったんですが、常に視点を上げる癖をつけておくことは大事だ思います。
そこから出す発想をきちんと現場につなげていく。これを繰り返すことが大切です。

野北
「1+1=2」のように人は型が決まった答えを求めたくなるものですが、マーケティングとしては「1+1=10かもしれない」という時もある訳で、おそらく、この「仮説なので答えがない」という点がみなさんの中でも課題であり、マーケティングに難しさを生んでいて、自分のコンフォートゾーンから抜け切らない、その結果、行動に結びつかないのではないでしょうか。そういう方が、一歩踏み込むためにはどうしたらよいと思われますか。



黒澤
悩ましいところですよね。マーケティングトレースは、分析後は仮説に沿って行うので抽象度が高い。
決められたプロセスに従ってやれば、結論が導かれるというものではありません。

答えのないなか、自分なりの仮説を導き出すことの必要性を浸透させていくしかないんだろうなと思います。
ハードルは高いと思いますが、「マーケターという仕事に就いて、
興味を持ち始めたところで行う最初のトレーニング」という位置づけを確立できたらいいなと思います。
それをやるのが当たり前、という形になれば、抵抗もなくなるかもしれませんね。

野北
研修プログラムの一環として行うのもいいですね。

黒澤
研修とまでいかずとも、上司と部下の間で行うのもいいと思います。
営業職におけるトレーニングといえばロープレ。デザイナーで言えばUIトレース…というように、
マーケティングトレースがマーケターにとって同等のものになるといいなと思います。
今のように、意識を高く持っている人だけのためのものではなくなるといいですね。

 

マーケティング予算と評価の関連性を考える


黒澤
最近マーケティングトレースのコミュニティで、
「理論を学ぶ」「ケーススタディ」「実践」の3つを往復して学習するのが一番いいんじゃないかという話をしたんです。
実際のトレーニングに例えると、ケーススタディは「インナーマッスルを鍛える」に値することじゃないでしょうか。
そこを日々鍛えることなしに、実践はできませんからね。

皆さんはどのようにマーケターを育成するうえで、どのような方法を取り入れているんでしょうか。
実はそもそも、マーケターの育成自体、うまくいっているところがあるのかというところにも興味があるんです。

野北
僕の周りではあまり聞かないですね。
マーケターの場合、評価の話になった時に時間軸を長く見ていたとしても、「半年間何をやったの?」と聞かれると、
チャネル最適化の話しかできないことが多い。
イベントを何回やって…という話になり、それを評価するよりほかないケースはよくあるのではないでしょうか。
評価の軸を変えるべき段階に来ているのでは、と感じます。

黒澤
人事評価と同様に、予算の捻出に関しても難しい問題ですよね。「マーケティング予算って何なの」というところに始まり、
誰がどう決めてどう予算案を上げるのかというところも難しい。
結局、チャネル最適化だと「これだけ費用対効果を出す」という部分が見えやすくなるし、
適した指標がほかには今のところないから、そういう話になってしまいますね。

    
野北
マーケティング予算も本当にそうですよね。結局投資なので、最終的に利益として返ってくるのは2、3年後。
そこがどうとらえられるかというのは、難しい問題ですよね。

黒澤
新規事業の場合は、将来の収益計画をもとに「今どれだけ投資する意味があるのか」など徹底的にリサーチしますが、マーケティングの場合は…。
そこが固まってくれば投資もしやすくなるでしょうし、お金がついてくれば、それに紐付いて動く人も出てくるんじゃないかと思います。

野北
投資の部分は難しいですよね。

ファンを集めて、そのファンから広げてもらおう、という顧客との本当の意味でのエンゲージとそこから先の拡散という視点で考えることも増えてきていますが、やはり結果が出るのは少し時間がかかります。
お金をかけずにできてスタートもしやすいので、シンプルでいいやり方だなとは思うんですが、半年間やってどれだけ売り上げが上がったのかという話になると、答えが見えづらい。
そういうものに対する評価の体質は変えるべきだという気がしますね。



黒澤
わかりやすく「新規事業」とみんな言いますが、
そうではなく、もう少しマーケティングというところに投資をしてその可能性を見ていくべきじゃないかと思いますね。
ビジネスモデルの問題なのか、VCとの付き合い方といった文化の問題なのか…ここはもう少し深く掘り下げると面白そうですね。

 

マーケターが市場や会社を動かす、という意思をもつ


野北
ものごとが自分に定着するまでには、「1.無意識無能 2.有意識無能 3.有意識有能 4.無意識有能」という4段階の学習フェーズがあるらしいんです。
すなわち、意識せずに到達できている状態=4.無意識有能が最上級。ここまでいける人は、なかなかいないけれど、意識してできるようになる=3.有意識有能までなら、なんとかいけるはず。
ただ、意識もせず、尚かつできてもいない=1.無意識無能の自分を認識することができないと、2にも3にも上がれないわけです。

マーケティングトレースも、まずは1である自分を認識して、なんとか2までこぎつけ、やり続けるうちにようやく3に到達して、そこから徐々に仕上がっていくものなんだろうなという気がします。

黒澤
その4段階の話、面白いですね。本当はそういうことを管理できる形も作りたいんです。
何回やって、アウトプットがどう変わっていって…というものを見える化できたら面白いですよね。

野北
ビフォーアフターがあったら面白いですね。10回やってみて、アウトプットはどう変化したのかを追えるような。

黒澤
初回から10回ほど参加してくれた結果、企画書の質が圧倒的に変化した人が、実際にいました。2年目でここまで作れるのか…と感心しましたね。



野北 
最後に、マーケターの皆さんへのメッセージはありますか?

黒澤
マーケターと名乗る以上、自分が市場を動かすという意志をもって仕事をすることが大事なんじゃないでしょうか。
そういう意志や、そこに対する責任感をもって仕事をしていくことがマストだと思いますし、自分自身もそうありたいと思っています。

野北
そうですね。「私がこの市場を動かすんだ」「会社のエンジンは私だ」という思いは必要ですよね。

黒澤
キーワードは「越境」ですね。組織を超えるということ。
マーケターって、そこを一番やっていかなきゃならないポジションだと思うんです。
そのためには、大きいゴールはどこにあるのか、自分はどうしていきたいのか、という芯をしっかりもっていることが重要だと思います。
日本全体がそういうマインドをもてるような循環を作りたいですね。

野北
本日はお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。


――黒澤さんのお話のなかで一貫していたのは「経営者の視点をもつ」こと。
マーケターには経営者と同じ、またはそれに近い広い視野を持って仕事をすることで、会社の未来が変わるという強い意識が必要です。
そして、それを実現するために欠かせないのがインナーマーケティング。
会社の理念と目指す姿を深く理解し、会社がどのように進んでいくべきかを他部署のメンバーと話し合ったり、マーケティングトレースをペアワークで行うなど、
社内での共通言語を少しずつ増やしていくことが、マーケターが思い描くマーケティングに近づく方法のひとつと言えるでしょう。
対談のなかで気づきがあった方は、ぜひ今から取り入れてみてはいかがでしょうか。


 
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