マーケティング コミュニケーションのチャネルとして、活用が広がりつつあるFacebookやTwitter等のソーシャルメディア。BtoCはもちろんのこと、BtoBビジネスを手掛ける企業でも、ソーシャルメディア活用は当たり前のものになりつつあります。それではその効果を最大限に引き出すには、いったいどうすればいいのでしょうか。この疑問にお答えするべく、ビッグビートは2016年12月1日に「BtoBソーシャルマーケティングセミナー」を開催。講師としてPDCAソーシャル代表のニール シェーファー氏をお招きし、「米国BtoB企業のソーシャルメディア活用最新事例!」と題した講演をしていただきました。
シェーファー氏は1990年~2005年にわたって日本に在住し、複数企業でビジネスを経験した後、2010年にソーシャルメディア戦略コンサルタント会社を設立。その後ソーシャルメディア関連書籍を3冊出版し、世界十数ヶ国で講演を行う他、大学でも講師として活躍しています。またソーシャルメディアのベストプラクティスと技術に焦点を当てたイベント「Social Tools Summit」も主催しており、Forbes誌の「Top 50 Social Media Power Influencers」にも選出されている、ソーシャルメディアの第一人者です。
講演でまず紹介されたのが、米国におけるソーシャルメディアマーケティングの現状です。すでに94%の企業がソーシャルメディアをマーケティングに活用しており、マーケティング予算の14%がソーシャルメディアに投入されていると説明。この割合が2021年には24%に達する見込みだと語ります。「現在オンラインユーザーが最も多く利用しているのがソーシャルメディアであり、これはいまや新聞の役割を果たしています。ここで積極的な情報伝達を行うことで、新しい形でのエンゲージメント構築が可能になります。例えばあるソフトウェア会社は、リード獲得コストを半減させながらエンゲージメントレートを300%向上。また契約自動更新の離脱率を3%削減し、年間4500万ドルの売上に結びつけた事例もあります」。
それでは実際に、どのようなメディアを活用すべきなのでしょうか。シェーファー氏は「BtoBビジネスを成功させるために最も重要なのは企業ブログ」だと説明。ブログは情報発信の「ホームベース」であり、ここに興味を引くコンテンツを掲載していくことで、トラフィック増大が可能になると言います。実際にブログに注力した結果、広告に20万ドル費やしていたコストを1/10以下に削減しながら、売上を400万ドルから500万ドルに上昇させたケースを紹介。また顧客にとって魅力のあるコンテンツ制作を行うには「コンテンツキュレーション」の発想が重要であり、米国企業の成功事例を見ていくと、9件の社外コンテンツ、1件の自社コンテンツ、1件のプロモーションコンテンツを組み合わせる「9-1-1ルール」が存在すると指摘します。
もちろんブログに掲載したコンテンツを拡散し、読者をここに誘導していくには、他のソーシャルメディアの活用も重要です。シェーファー氏はTwitterとLinkedInを取り上げ、それらの特性と戦略的活用について語ります。
「Twitterはスピードが速く、検索エンジンとしても重要な役割を果たしています。Googleは月間1兆、YouTubeは月間30億のクエリーを処理していますが、Twitterでも毎日21億(月換算では約600億)のクエリーが処理されているのです。また情報を発信するだけではなく、情報を収集して潜在顧客を見つけ出すツールとしても優れています。その一方でLinkedInは、魅力のあるプロフィールを掲載し、グループを立ち上げることが重要になります。米国では大手企業ほどLinkedInグループの運営に熱心です。また最近ではペイドソーシャルが大きな流れになっていることも見逃せません。ソーシャルが『Amplifier:増幅器』だとすれば、ペイドソーシャルは『Accelerator:加速器』であり、よりスピーディかつ戦略的に、オーディエンスにリーチできるという魅力があります」。
話はこの後「従業員アドボカシー」へと発展。これは企業ブランドの伝達を、従業員が担っていくというアプローチです。ある大手IT企業のケースでは、社内エキスパートのソーシャルメディアにおける発言が、企業による情報発信の7倍のトラフィックを生み出す結果に。多くの人は企業の公式メッセージや経営者の発言よりも、そこで働く従業員やエキスパートの発言を信用する傾向が強いのです。当然ながらその効果は大企業ほど大きくなります。従業員がソーシャルメディアでつながっている友人・知人の数は平均160人だと言われていますが、従業員が1万人いれば160万のコネクションが潜在的に存在することになります。さらにシェーファー氏は「インフルエンサーマーケティング」にも言及。すでに75%のマーケターがこの手法を活用しており、米国では最もホットな手法になっていると説明します。
本日ご紹介したのは米国の動向ですが、日本にも同様のチャンスが存在します」とシェーファー氏。バイヤーズジャーニー(購買に至るプロセス)の変化は、日本でも米国と同じように進んでいるからだと言います。「日本ではLinkedInのユーザーが限定されており、FacebookやLINEの利用者が多いという違いはありますが、これらを効果的に活用するためのアプローチには多くの共通点があります。未来のために今できることはたくさんあります。日本企業の皆様にも、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います」。
これを機に、シェーファーさんにはこれからも、日本に向けた情報発信をお願いしたいと考えています。またビッグビート自身も、BtoBマーケティングに役立つ情報を発信し続けていきます。